「SESはやめとけ」と言われる一方で、未経験からIT業界へ入る選択肢としてSESを検討する人もいます。では、実際のところSESは避けるべき働き方なのでしょうか。
私はJavaを中心に、金融・保険系を含む7つの現場で、SESエンジニアとして5年間働いてきました。月額の案件単価は75万〜100万円前後、基本給は5年間で21.5万円から24.8万円へ上がりました。残業が少ない在宅現場も、月50時間を超えるフル出社の現場も経験しています。
先に結論を言うと、SESそのものを一括りにして良い・悪いとは判断できません。注意すべきなのは、自分の単価、給与制度、商流、仕事内容、身につくスキルが見えないまま働き続けることです。
この記事では、私が5年・7現場で経験した範囲から、SESの単価と給料、いわゆる現場ガチャ、良かった点、消耗しやすい人の特徴を整理します。会社名・顧客名など、守秘義務に関わる情報は公開しません。
SESの実態を先にまとめる
| 確認する点 | 5年間で感じた実態 |
|---|---|
| 単価と給料 | 単価が上がっても、給料が同じ割合で上がるとは限らない |
| 配属先 | 残業、出社頻度、人間関係、担当工程が現場ごとに大きく変わる |
| 成長 | 複数現場を経験できる一方、同じ作業だけではスキルが停滞する |
| メリット | IT業界への入口になりやすく、業界知識や現場対応力を得られる |
| 最大のリスク | キャリアの判断を営業や配属先へ任せ、自分の市場価値を確認しないこと |
SESで働くなら、「今の会社に残るか、すぐ転職するか」の二択から考える必要はありません。まず、自分の現在地を数字と言葉で確認することが先です。
SESは法律上の契約名ではない
SESは、エンジニアの技術や労務を顧客の開発現場へ提供する事業を指すときに使われる呼び方です。「SES」という名前の法律上の契約があるわけではなく、企業間の実際の契約には準委任、請負、労働者派遣などがあります。
ここで重要なのは、誰が業務の指示を出すのかです。厚生労働省は、請負や委任・準委任では、発注者と受託側の労働者との間に指揮命令関係が生じないことを、労働者派遣との区分のポイントとして示しています。契約の名称だけでなく、現場での実態が重要です。
自分がSESで働いている場合は、雇用契約書だけでなく、会社へ「この案件は準委任・請負・派遣のどれか」「業務の指示は誰から受けるのか」を確認しておくと、働き方を理解しやすくなります。
商流が深いと、自分の立ち位置が見えにくくなる
私が経験した現場では、次のように複数の会社が間に入ることがありました。
エンドユーザー → 元請け・SIer → 協力会社 → 所属会社 → エンジニア
中小企業庁の情報サービス・ソフトウェア産業向けガイドラインでも、この業界では多重かつ不透明な請負関係が一般化していることが課題として挙げられています。
ただし、間に会社が入っているからといって、その手数料がすべて不当とは限りません。営業、契約管理、社会保険料の会社負担、教育、待機時の給与、採用など、所属会社が負担する費用と役割もあります。
問題は、商流や給与の決まり方が本人からまったく見えず、単価や役割が上がっても待遇に反映される仕組みがない場合です。
単価75万〜100万円、基本給21.5万〜24.8万円だった
以下は一般的な相場ではなく、私が実際に確認・経験した範囲の数字です。
| 月額の案件単価 | 75万〜100万円前後 |
|---|---|
| 基本給 | 5年間で21.5万円 → 24.8万円 |
| 手取り | 残業時間などにより22万〜30万円前後 |
| 現場数 | 5年間で7現場 |
この数字を初めて見たときは、単価と受け取る給料の差に驚きました。ただし、案件単価と手取り額をそのまま比較して「還元率」を計算するのは正確ではありません。単価は企業間の売上であり、手取りは税金や社会保険料を引いた後の金額だからです。
確認するなら、少なくとも次の項目を分けて見る必要があります。
- 月額単価と商流
- 額面給与、賞与、各種手当
- 社会保険料などの会社負担
- 待機中の給与と教育制度
- 単価や役割が上がったときの昇給ルール
私の場合、基本給は5年間で月3.3万円上がりました。一方、現場が変わると単価は数十万円単位で動きます。単価と給与が同じ割合で連動しないことは、今後の働き方を考えるきっかけになりました。
現場ガチャの実態|7現場で働いて分かったこと
SESで「現場ガチャ」という言葉が使われるのは、所属会社が同じでも、配属先によって働き方が大きく変わるからです。
| 比較項目 | 働きやすかった現場 | 厳しかった現場 |
|---|---|---|
| 勤務形態 | 在宅中心 | フル出社 |
| 残業 | 少なめ | 月50時間超 |
| 通勤 | ほぼなし | 片道約1時間半 |
| 仕事の進め方 | 裁量が比較的大きい | 手続き・制約が多い |
| 成長面 | 快適だが技術的な挑戦は少なめ | 負荷は高いが学ぶことは多い |
最長は1年強、最短は支援要員として約1か月でした。同じ会社には3年以上同じ現場で働く人もいたため、異動の頻度も人によって異なります。
7現場を経験して、働きやすさを最も左右したのは人間関係でした。技術や勤務条件が希望に近くても、質問しにくい、相談しにくい、心理的な負担が大きいチームでは消耗します。反対に、忙しくても相談できる人がいる現場は続けやすいと感じました。
配属前にすべてを見抜くことはできません。ただし、面談時に「チーム人数」「同じ会社の社員がいるか」「残業実績」「在宅頻度」「担当工程」「質問やレビューの体制」を聞けば、判断材料は増やせます。
5年間で感じたSESのメリット
未経験からIT業界へ入る入口になりやすい
研修や補助的な工程から経験を積める会社もあり、実務経験がない人にとって選択肢になります。ただし、研修内容や最初の配属先は会社によって違うため、「未経験歓迎」という言葉だけでは判断できません。
複数の現場と開発環境を経験できる
私は在宅中心とフル出社、短期支援と長期案件、比較的新しい環境とレガシー寄りの環境を経験しました。複数の職場を見ることで、自分が働きやすい条件を具体的に言えるようになった点はメリットです。
金融・保険の業務知識を蓄積できる
金融・保険系では、セキュリティ、承認手続き、大規模システム、ウォーターフォール開発など、独特の環境を経験できます。ただ「金融案件にいた」だけではなく、担当業務、工程、改善したことを説明できれば、次の案件や転職で経験を伝えやすくなります。
金融系SESの現場については、金融系SESの現場はどんな場所か【5年いた実感】で詳しく整理しています。
SESで消耗しやすい人の共通点
快適な現場にいるだけで、スキルが更新されない
残業が少なく人間関係も良い現場は貴重です。ただ、同じ定型作業だけを続けていると、職務経歴書へ追加できる経験が増えないことがあります。居心地の良さと成長は分けて確認する必要があります。
キャリアの主導権を営業へ預けたままにする
希望工程を伝えない、単価や契約を確認しない、スキルシートを更新しない状態では、紹介された現場を受け入れるだけになります。営業担当は案件を探してくれますが、自分の将来まで決めてくれるわけではありません。
自分の経験を言語化していない
同じJava案件でも、担当工程、規模、役割、障害対応、改善経験によって評価される内容は変わります。「現場に何年いたか」だけでなく、「何を任され、何ができるようになったか」を残しておく必要があります。
SESが向いている人・合わない可能性がある人
| 向いている人 | 合わない可能性がある人 |
|---|---|
| 環境の変化へ比較的対応できる | 同じ製品・チームで長く改善を続けたい |
| 希望条件やキャリアを営業へ伝えられる | 配属先が変わることに強い負担を感じる |
| 複数現場を経験として活用できる | 成果と給与が直接連動する環境を重視する |
| 業界知識や現場対応力を伸ばしたい | 自社サービスへの意思決定に関わりたい |
これは優劣ではなく、働き方との相性です。SESでも会社や案件によって条件は大きく異なるため、「SESかどうか」だけで判断しないことが重要です。
転職を決める前に確認する5項目
- 単価・給与制度:単価を確認できるか、昇給へどう反映されるか
- 商流・契約:何次請けか、契約区分と指示系統はどうなっているか
- 経験:過去1年で職務経歴書へ追加できる内容は何か
- 次の希望:工程、技術、業界、在宅頻度、残業などの優先順位は何か
- 市場比較:同じ経験年数・技術の求人では、どのような条件が提示されているか
この5項目を書き出すだけでも、「今すぐ辞めたい」という感情と、実際に改善すべき条件を分けられます。転職サービスを使う場合も、登録すること自体を転職の決定と考える必要はありません。求人や評価を比較するための情報収集として使えます。
まずは自分の現在地を確認する
単価・給与・担当工程・業務知識を整理し、今の会社に残る場合と転職する場合を比較しましょう。
当サイトは、転職すれば必ず年収が上がるとは考えていません。判断材料を整理することを目的にしています。
まとめ|危険なのはSESではなく、現在地を知らないこと
- SESという言葉だけでは、実際の契約や働き方までは分からない
- 案件単価と手取り額を直接比較して、還元率を判断するのは正確ではない
- 配属先によって、残業・出社・人間関係・成長機会が大きく変わる
- SESにはIT業界への入口、複数現場、業界知識というメリットもある
- 単価・商流・経験・希望条件・市場価値を定期的に確認することが重要
SESを必要以上に否定することも、現状を無条件に肯定することもありません。今の環境で得られるものと、失っているものを整理したうえで、自分に合う選択をすることが大切です。
転職するか迷っている場合は、応募を急ぐ必要はありません。まずは「SESから転職する前にやること7選」で、経験・希望条件・市場価値を整理しておくと判断しやすくなります。
