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考えすぎて眠れない夜、アメジストを”まだ”手に取っていない話
日付が変わる。電気を消して、目を閉じる。今日やるべきことは全部終わったはずなのに、頭の中だけがまだ営業中だ。
昼間に開いたタブが、一つも閉じていない。来週の打ち合わせ、まだ返していないメッセージ、何年も前の、もう誰も覚えていない失敗。閉じたつもりで、別のタブが開く。消しても、また増える。眠りたい。でも、眠るためにできることが何もない。これがいちばん厄介だ。
こういう考えごとは、昼間ならまだマシなのだ。返信を書けばいい。調べればいい。決めて前に進めば、一個ずつ閉じていく。手を動かした分だけタブは減る。
でも夜は、動かしようがない。深夜にメールは送れないし、決めたところで今すぐ誰にも届かない。やれることがゼロなのに、頭だけが手を止めてくれない。たぶん僕は、眠れないんじゃない。考えるのをやめられないだけだ。
そんな時期に、アメジストという石がよく目に入るようになった。深い紫の、わりとどこにでもある石だ。調べてみると、古くから「夜」や「鎮まり」の象徴として親しまれてきた石らしい。日本でも紫は昔から特別な色だった。夜と紫の取り合わせは、昔の人もわりと同じことを感じていたのかもしれない。
先に正直に言っておく。僕はこの石が”効く”とは思っていない。枕元に置いたら眠れる、なんて期待はしていない。元エンジニア寄りの頭なので、石が脳や体に作用する、という話はやっぱり信じきれない。
それでも気になっているのは、”効果”としてじゃなくて、”合図”としてだ。
枕元に、手のひらに収まる重さのものが一つある。寝る前にそれに目が留まった瞬間、「今日はもう店じまい」と自分にスイッチを切らせる——その合図の道具としてなら、石は悪くない気がしている。眠らせてくれる石、じゃない。”考えるのをやめる側”に立つための、自分のための小さな儀式の道具。そういう枠でなら、紫の石を一つ置いてみるのは、案外ばかにできない気がしている。
ここまで書いておいて、僕はまだこの石を買っていない。
たぶん、どこかで「石ごときで」と思っている自分がいる。占いは信じないし、スピリチュアルなものは正直、苦手な部類だ。——でも、気になっている。この”信じてないのに、気になる”という感じ。同じ温度の人が、たぶんいる。効果を約束されたいわけじゃない。ただ、夜のタブを閉じるきっかけが一つでも増えるなら、と思っている人。
何をすればいいのか分からなくて、考えてばかりで動けない日に。
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